偉大なるマルグリット

モデルとなった“音痴の歌姫”とは

音楽的才能に全く恵まれなかったにも関わらず、その堂々として型破りな歌いっぶりで大人気を博した、アメリカのソプラノ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンス (1868年生まれ)。

父親の遺産と離婚した夫からの莫大な慰謝料にものを言わせて、音楽家としての人生をスタートさせた。その歌声に最初はあっけにとられた人々も、いつのまにか自由で大らかな歌声に魅入られてしまったという。さらにレコードもリリースし、1944年に76歳でカーネギー・ホールの舞台に立った彼女は、聴衆が笑うのは自分の音楽を楽しんでいるからだと固く信じていた。彼女の死後70年以上たつ今でも、CDで彼女の熱唱を楽しむことができる。

本作はフローレンスの歌を聴き、自信に満ち溢れたポートレートを見たグザヴィエ・ジャノリ監督が、その微笑の理由を想像しながら書きあげた、全く新しい物語である。